仏さまへのお供え 飲食供養(おんじきくよう)
仏・法・僧の三宝に対して供給奉養(くきゅうぶよう)の精神で、感謝の思いと信仰心を表す行為を「供養」といいます。
そして供養の中でも、仏前に食べ物や茶湯を供えて感謝の気持ちを表しご冥福をお祈りすることを「飲食供養」といいます。
香供養・花供養・灯供養とともに大事な供養の形式です。
飲食供養に使ううつわを飲食供養具といい、「仏飯器」・「茶湯器」のほかにも、仏飯器を置く「仏器台」、食物を盛る脚付きの器「高坏(たかつき)」などがあります。
仏飯器は4つの椀と高坏になり、高坏以外の仏飯器には蓋がついています。
そして仏壇に供える小型のお膳である仏飯器で、初七日から四十九日、百カ日、祥月命日、法事、正月、お盆、春秋のお彼岸などに、精進料理を盛り、箸を並べ仏様へ感謝とご先祖様への供養の心を表します。
そのお供えの一汁三菜と白飯から成る精進料理を「御霊供膳(お霊膳)」といいます。
お仏壇を新しくし、開眼供養を行う際もお霊膳をお供えします。
御霊供膳(お霊膳)の意味
法事では故人の霊が私たちが生きるこの世に帰って来ます。
お霊膳をお供えする目的は、帰ってきた故人の霊をもてなし感謝と供養の気持ちを表すことです。
実際には仏壇から下げた後、私たちでいただき、食事の楽しみを故人と共有します。
お盆には、供えるならば8月13日の夜から16日の夜にかけて毎食お供えし、送り火で故人の霊を送り出すまで毎食後にいただきます。
お霊膳の供え方
お仏壇に供える時には仏さまが召し上がりやすい 仏壇側にお箸が来るように置きます。
こちらから見て奥(仏さまのそば)①親椀(右)と②汁椀(左)です。
私たち側に③平椀と④壺椀を置きます。その際、浄土宗では平椀が左、壺椀が右になります。
そして膳の中央に⑤高坏を並べ、膳引きと呼ばれる台に置きます。
膳は1つ、もしくは2つ並べて供えます。
仏さまとご先祖さまにそれぞれお供えする場合には箸を二膳分用意するのが正式とされています。
大小二つ並べる場合は仏さまに向って右が仏さまの分で大、左がご先祖さまの分で小となります。
僧侶がお経の中で半斎供養(お霊膳を捧げる作法)をしない場合は、お供えしてから仏飯器の蓋を取って手を合わせます。
蓋の取り方は、③平椀から右回りに②汁椀、①親椀、④壺椀と取っていきます。
お霊膳にふさわしい精進料理
お霊膳に盛りつける料理は一汁三菜が基本です。
ごはんを親椀に山盛りに盛りつけ、三菜は季節の野菜を取り入れ、彩りを考えた精進料理を作ります。
精進料理の目的は殺生や煩悩を避けることです。
そのため、肉、魚を使わず、ネギやらっきょう、にら、にんにくなどの刺激が強い香味野菜(五辛と呼びます)を避けて作る菜食になります。
できれば煮物で使うだしも動物性では取らず、しいたけなどで取ったものを使います。仏様、ご先祖様への思いを込めて、なるべくご家庭で手作りした料理をお供えしましょう。
お霊膳の各うつわへの盛り付けとメニュー例
お霊膳の料理は、基本的に山盛りに盛り付けるのが良いとされています。
ご先祖さまが飢えを表す「餓鬼道」に落ちてしまわないようにしっかり食べていただく、という仏教の考え方に由来します。
①親碗(おやわん)/ 飯椀(めしわん)
ごはんを盛る器。
深さがあり一番大きい器です。
蓋は一番小さい。
主食となる白飯を山盛りによそいます。
盛り付けポイント
上の部分が丸くなるように整えて盛り付けます。
②汁椀(しるわん)
味噌汁、吸い物用の器。
深さがあり二番目に大きい器です。
蓋はすっぽり器に入る。
具としては豆腐やおふ、わかめ、油揚げなどを入れます。
また季節の野菜を入れると良いです。
ダシについてはシイタケや昆布などの植物性の食材からとります。
本来はカツオや煮干しなどの動物性の食品からとってはいけません。
盛り付けポイント
通常の汁もののよそい方と変わりません。
③平椀(ひらわん)
野菜の煮物を3品程度盛る器。
大きく平たく底の浅い器です。
外側に溝(線)が入っています。
蓋は一番大きく、器にかぶさります。
ニンジンや高野豆腐、コンニャク、イモ類、油揚げ、豆類などの食材を使います。
メニュー例
がんもどきの煮物
さやいんげんの煮物
むすび昆布の煮物など
盛り付けポイント
献立を決める際には彩りを重視すると良いでしょう。
野菜の煮物を 彩りを意識 して盛り付けます。
④壺椀(つぼわん)
煮豆、胡麻和えやなますなどの和え物、副菜を盛る器。
底が深く一番小さい器です。
側に溝(線)が入っています。
汁椀の蓋より平たく、器にかぶさります。
メニュー例
小松菜のナムル
わかめときゅうりの酢の物
ひじき
ほうれん草の胡麻和えなど
盛り付けポイント
煮豆や和え物を小さな山を作るように、高さが出るよう盛り付けます。
⑤高坏(たかつき)/ 腰高 (こしだか)
香の物を盛る器。
浅く脚の長い器です。
蓋はありません。
脚の長さは仏様を敬う心を表しています。
盛り付けポイント
高坏に盛る香の物は「身を切る」といわれます。
3切れを避けて2切れ分盛り付けましょう。
お霊膳を引くタイミング
お霊膳は、毎食食事をするときに仏壇にお供えし、食べ物が悪くならないうちに下げるのが基本です。
夏場など暑い時期は特に食べ物が傷みやすいため早めに下げます。
お霊膳を下げる際には仏壇に対して「お下げします」と一言添えましょう。
下げた食事は家族全員でいただくのが基本です。
お霊膳を供えすることで私たちは仏さま、ご先祖さま、故人に感謝の気持ちをあらわせきます。
そして仏さま、ご先祖さま、故人にお供えした食事をお下げし、その食事を私たちがいただくことで、食事の楽しみ、喜びを仏さま、ご先祖さま、故人と一緒に感じることができます。
「お霊膳を供える」こととは、つまり私たちの心と仏さま、ご先祖さま、故人の心がつながることなのです。